【徒然革】 よく聞く「タンニン」って何?(前編)

【徒然革】
「そもそも≪タンニン≫って何?」(前編)

2023.04.16

日常生活の役に立たない、
マニアックな革のうんちく知識を
気ままにつぶやく
「徒然革(つれづれがわ)」

つれづれなるままに日暮らし、
PCに向かひて、
心にうつりゆく革のよしなしごとを
そこはかとなく書きつくれば、
あやしうこそ革狂ほしけれ——

かつて「副店長」の肩書で、数々のマニアックな革のうんちくコラムを担当した古参スタッフが、日常生活の役に立たない、知るだけムダな革や鞄の小ネタを気まぐれにお届けします。

よく聞く「タンニン」って何?

一般には見慣れない言葉の多い、革の専門用語。その中でも比較的よく目にするのが、革を説明する際に出てくる「タンニン鞣し」と「クロム鞣し」ではないでしょうか。このうち「クロム」はメッキでも名前を聞くので、金属だと何となく分かるんですが、「タンニン」って、そもそも何?って感じですよね。


というわけで、今回の「徒然革」では、鞣しの話でよく出てくる「タンニン」について詳しく解説。タンニンだけに渋い内容ですが、最後までお読みいただけましたら幸いです。

 

「タンニン」は、
植物の「渋」の成分

ヌメ革など、一般的に「ナチュラルな風合い」の革をつくる時の鞣し剤として使われることが多いのが、「タンニン」という物質。実を言うとこれ、植物の「渋」の成分なんです。そう、柿渋の「渋」ですね。


この「タンニン」というのは、ほとんどの植物が持っているポリフェノールの一種で、フラボノイドというグループに属する物質群。広い意味で、お茶のカテキンや赤ワインのアントシアニン、大豆のイソフラボンなんかの仲間になります。

 

赤ワインにはタンニンも豊富

ちなみにこの「タンニン」はカテコール系とピロガロール系とかいう2タイプに分類可能で、非常に多くの種類があります。多くの植物はこの両タイプを何種類も併せ持っていて、茎や葉、実などの部位によっても種類や量が異なるんだそう。食品では柿、栗、ナッツ、リンゴ、ブドウ、茶……などに多く含まれます。

 

「タンニン」が持っている主な性質

では、その「タンニン」はどのような性質を持っているのでしょうか。その種類によって微妙に性質や作用する力が異なりますが、概ね次のような共通の性質があるとされています。

渋い職人

①渋い

タンニンには、たんぱく質のコラーゲン線維を変性させ、凝集させたり収縮させたりする「収れん作用」という働きがあります。渋柿や濃いお茶を口にすると、口の中がキュッとしぼむ感じがしますよね? あれが「収れん作用」です。この作用が口内で起きたことに対する感覚が「渋い」で、それが「渋」の所以です。

②防腐・抗菌作用

多くの「タンニン」には優れた防腐・抗菌・抗酸化作用があり、古来より薬や防虫・防腐剤として利用されてきました。もともと、動物や昆虫、細菌などに対する、植物の自衛物質だからという説があります。

ヌメ革の日焼けもタンニンの性質

③紫外線で変色

「タンニン」は紫外線で酸化し、暗褐色に変わる性質があります。多くの木の皮が黒っぽい色をしているのは、そこに含まれる「タンニン」が日光で暗褐色に変わるため。タンニン鞣しの革が日焼けするのも同じ現象とされます。

④金属と敏感に反応

金属と反応しやすく、水に溶けにくい物質をつくるのも「タンニン」の特性。例えば紅茶に蜂蜜を入れると黒くなるのは、紅茶のタンニンが蜂蜜の鉄分と結びつき、不溶性の黒い物質に変わるためです。

実は以上の①②の働きを利用したのが、「鞣し」です。動物の皮を腐らせず、繊維を引き締めて強靭にすることで、丈夫で長く使える「革」を生み出すのですね。ちなみに「タンニン」という言葉は、英語の「tan(鞣す)」に由来しています。

土屋鞄で、タンニン鞣しを用いて仕立てられた革を使用しているコレクションをご紹介

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