2023.12.28
【特別号】
スタッフ・山添と嶋谷が、
「トーンオイルヌメ」について
語り合います(前編)
「トーンオイルヌメ」シリーズ
特別対談(前編)
長年多くのお客さまから愛されているロングセラーシリーズ「トーンオイルヌメ」。このたび、2型のアイテムを数量限定カラーで製作し、Tsuchiya Clubの皆さま限定で先行販売を実施することが決定しました。
そこで今回は、数量限定カラーの2アイテムをご紹介する前に、「トーンオイルヌメ」製品の愛用者であり、メルマガでもおなじみの2人にシリーズの魅力について語り合ってもらいました。
土屋鞄に入社して今年で20年を迎えた山添(右)のマニアックな知見や、元店舗スタッフの経歴を持つ嶋谷(左)ならではの視点など、編集部の予想を遥かに上回るディープな内容に。深煎りのコーヒーをゆっくりと味わいながら、どうぞ最後までお付き合いください。
私たちが「トーンオイルヌメ」に惹かれる理由
※手前から鞄4つ、全て山添の愛用品
ーー初めて購入した「トーンオイルヌメ」製品は?
山添:最初に買ったのは「ジップトップショルダー」の「ブラウン」でした。
嶋谷:2色持っているということは、一番山添さんにハマった形なんでしょうか。
山添:そうですね。今は旅行用鞄として街並みを歩く時に使うことが多いかな。着ていく服によっては「こげ茶」が合う時があったから、「もう1色買おう」と思って購入しました。
嶋谷:僕は土屋鞄に入社するまではスムース系の革を使ってきたんですけど、入社してから初めて、「トーンオイルヌメ」シリーズに使われている「オイルヌメ革」のような、ソフトで風合い豊かな革と接する機会ができました。
ーー今でも土屋鞄を代表するシリーズですが、その理由はなんだと思いますか?
山添:エイジングがすごく豊かなところでしょうか。自分も土屋鞄に入社するまでは、エイジングする革といったら「ヌメ革」や「ブライドルレザー」の印象しかなくて。エイジングした製品を見て、色つやだけでなく、シボの表情も変わってくるのが面白いと思ったんです。
※左:山添愛用品、右:新品
嶋谷:確かに、「ヌメ革」よりもオイルを多く含ませているからエイジングの進みが早いですし、革のくったり感が良いですよね。
山添:そうそう。“くったりする良さ”を初めて知ったのは、「トーンオイルヌメ」シリーズがきっかけでした。
「オイルヌメ革」って、色つやの変化が大きい革の中でも「表情の変化」の要素が入ってくるのが面白いんです。
「素材との出会いも楽しんでほしい」
山添:革製品というと、長く使えるとか、上質な素材であるとか、一般的にもそのような印象がありますよね。
嶋谷:そうですね。この「オイルヌメ革」はそれらに加えて、天然皮革ならではの表情の違いが出やすく、エイジングが一つひとつ異なってくるところも魅力的ですよね。
これほど“使う前から個体差がある”革は、僕が約10年前に入社した当時はそこまで多くなかったように記憶しています。
山添:確かに。お店で同じ「トーンオイルヌメ」の製品を見比べると、革の表情の多様性に驚かされます。
嶋谷:「革とどう付き合っていくのか」を楽しむ前に、「どういう革と出会えるのか」のワクワク感がある。自分だけの革との一期一会を楽しめるというところは、土屋鞄の中でも比較的強い素材だと思いますね。
ーー店舗スタッフとしての経歴を持つ、嶋谷さんならではの視点ですね。
嶋谷:僕が一番最初に買った「トーンオイルヌメ ショルダー」が、まさにそうした楽しみの詰まった鞄でした。フラップの表面と裏面、さらに鞄の背面の表情まで全部が違っていて。それを「シボのフルコース」と呼んでいました。笑
※山添愛用の「トーンオイルヌメ ショルダー」(現在販売している製品と仕様が異なります)
山添:自分にしか分からない一点物との出会いが、「トーンオイルヌメ」の良さだと思います。
嶋谷:自分好みの表情と出会えた時の喜びは大きくて。それが、このシリーズの一番の魅力なのかなと。ちなみに山添さんは、シボありとシボなしだと、どちらが好きですか?
山添:シボがある方が好き。シボが“立っている”方ですね。
嶋谷:そうですよね。僕も程よいシボ感があって、粒が比較的そろっているものが好きです。
革の表情を生かす「袋縫い」の仕立て
嶋谷:「トーンオイルヌメ」シリーズの製品は革の表情を最大限に生かすために、コバ(革の裁断面)が隠れる“袋縫い”の仕立てを採用しているのも、特徴の一つですよね。革のふっくら感を大切にしつつ、膨らみが大きくなりすぎないように調整されていて。
山添:そうですね。「トーンオイルヌメ」シリーズのデザインって、年齢や性別を超えて革の魅力を楽しめるよう、それまでの仕立ての常識を大きく変えてくれたシリーズでもあると思っています。
「トーンオイルヌメ」シリーズは登場した当初からユニセックスアイテムとして販売していますが、当時、男性が使う鞄といえば、革を貼り合わせてコバを磨いた仕上げの箱形が一般的でした。柔らかいシルエットになる袋縫いは基本的に女性向けバッグの仕立て方で、それを男性が使うのは、まだあまりなかったと記憶しています。
そのような背景の中で、男性のスタイルにも自然に合わせられるよう、袋縫いの仕立てでもふっくらとしすぎない、角を少し出した仕上げにしてあるんじゃないかと思います。
頻繁に手入れをしなくても気軽に使える“ラフさ”
嶋谷:革の話に戻りますが、初めて「トーンオイルヌメ」の製品を使った時に感じたのは、扱いやすさでした。
「革は扱うのが大変」だと思われがちですが、「オイルヌメ革」はオイルがたくさん含まれているから、傷が付いてもなじみやすかったり、水に濡れてもシミになりにくかったり。
細かいことを気にしなければ、頻繁に手入れをしなくても気軽に使えるラフな使いやすさがあると感じます。
山添:小さい傷が仮に付いても、逆に様になる素材で扱いやすいですよね。
自分が「ショルダー」を一番使っていたのは自転車通勤をしていた頃なんですけど、急に降ってきた雨でずぶ濡れになったことが何回もあって。
そんな時はいつも、全体を水拭きして濡れムラをならし、乾き際にオイルを塗ってケアしていました。そうすると、かえってエイジングが進むことがあるんですよね、この革は。初めのうちは雨ジミが残ることもありましたが、エイジングと共に目立たなくなりました。笑
この革はくせが付いてくったりしてきた方が味わい深く感じるし、気を遣わないですね。嶋谷:僕も、「ショルダー」を斜め掛けして自転車に乗っているときに雨に降られて。個人的な意見ですけど、その時の雨ジミができた記憶がないんですよね。
山添:「こげ茶」は特に分からないですよね。
お手入れで押さえるべきポイントは「角」
ーーこの革のお手入れに、何かコツはありますか?
嶋谷:袋縫いの仕立ては、どうしても角すれが起こりやすいのですが、そこをしっかりケアして整えると、全体的にも良い感じに仕上がりますね。色が薄くなってきたり、乾燥を感じたりしたら、何度か丁寧塗りこんで。
(※動画撮影を試みたものの、公開に間に合わず……。YouTubeでご覧いただけますので、気になる方はこちらをご視聴ください)
山添:「トーンオイルヌメ」のアイテムにオイルケアをするときは、革の折り目や角に重点的に行うと良いですよね。靴で言うと、「トゥ(つま先)」みたいな感じでしょうか。
嶋谷:同じ感覚です。靴だとトゥと踵(かかと)を光らせますよね。
山添:鞄も靴と似たような感覚で、重点的に縁の当たりとか、角の擦れやすい部分をオイルで塗ってあげると見栄えが良くなります。
ーー「トーンオイルヌメ」の製品は、どのくらいの頻度でお手入れされていますか?
嶋谷:僕は、鞄は3ヶ月に1回くらいです。
山添:鞄は同じくらいの頻度。財布は数個をローテーションで1ヶ月おきに替えているから、そのタイミングでお手入れしています。
嶋谷:使用頻度にもよるので一概にこれといった期間を提示することは難しいですが、月に一度くらいは革製品を気にかけていただけると良いかもしれません。隅から隅までフルメンテしなくても、擦れてしまった部分のみでも良いですし。
山添:角のみのケアなら、気負いというか、プレッシャーに感じないかもしれませんね。もし一つの鞄を一年中使っているようでしたら、月に一度くらいの頻度でケアした方が良いと思います。
嶋谷:そうですね。仕事鞄と休日鞄で、お手入れの頻度は異なるかもしれません。お店では予約不要で無料で承っている「お手入れサービス」を実施しているので、ぜひ気軽に試していただきたいです。
山添:さすが、嶋谷くん。しっかりしたコメントをありがとうございます!
お手入れのみのご来店も、お待ちしています。店舗スタッフさんと革製品について語り合ったり、今回の対談の感想をお伝えいただいたりも。笑 革製品をもっと身近に感じて、長く革との時間を楽しんでいただけたら嬉しいです。
さて、いかがでしたでしょうか?
前編は「トーンオイルヌメ」シリーズの魅力について2人に語っていただきましたが、次回の後編では、いよいよシリーズから登場する数量限定色で仕立てた2型のアイテムについてお届けします(年明け配信予定です)。
さらに、メルマガよりもひと足先に、12/28(木)にインスタライブで限定アイテムについて嶋谷がご紹介。
後編も、2人の革への深い愛とそれゆえの豆知識が盛りだくさんで、思わず「なるほど」と口にするはず。どうぞ、お楽しみに!
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