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【徒然革】
革を語るメルマガ:
いよいよ開幕。革好き必見の競技は?

2024.7.26

日常生活の役に立たない、
マニアックな革のうんちく知識を
気ままにつぶやくメルマガ
「徒然革(つれづれがわ)」

つれづれなるままに日暮らし、
PCに向かひて、
心にうつりゆく革のよしなしごとを
そこはかとなく書きつくれば、
あやしうこそ革狂ほしけれ——

かつて「副店長」の肩書で、数々のマニアックな革のうんちくコラムを担当した古参スタッフが、日常生活の役に立たない、知るだけムダな革や鞄の小ネタを気まぐれにお届けします。

今回の革メルマガでは、日本時間7/27(土)午前2時半に開幕するパリ五輪にちなんで、オリンピック競技にまつわる革のエピソードを5つご紹介。意外な競技に、意外なところに革が使われているという、おつまみ的な小ネタをお届けします。

オリンピック観戦の合間によく冷えたマッコリ(お焦げ風味)を嗜みながら、どうぞご笑覧ください。

革のグローブやシューズは数あれど……

コロナ禍下で制限が多かった2020年東京五輪とはうって変わり、いつもの雰囲気で見られそうな2024年パリ五輪。今回も多くの競技が行われますが、革メルマガの執筆者としましては、やはり「革」の活躍にも注目したいところ(熱)。

とはいえ、グローブやシューズに使われていてもあまり面白くはないので、それ以外にもないかとこっそり調べてみたところ……ありました、ありましたよ皆さま。もちろん、今回の大会で必ずしも革製のものを使っているとは限らないのですが、競技観戦中に見つけては心密かに「おっ」とほくそ笑む……そんな小ネタを仕込んできました。

“革のダイヤモンド”を使うアーチェリー

“革のダイヤモンド”といえば、革をこよなく愛する皆さまには言わずと知れた高級革の代表格、コードバンのこと。農耕馬の臀部の皮膚から……なんてくだりはもう、革フェチの皆さまには耳タコでございましょう。そんな“革のダイヤモンド”を、なんと道具の一部に使用している贅沢な競技があるんですね。それは、アーチェリーです。

アーチェリーでは、ストリング(弦)を引く指に「タブ」と呼ばれるプロテクターを装着するんですが、その素材で最高とされるのがなんとコードバン。牛革製を使う人もいるようですが、この「タブ」には耐久性はもとより、手にフィットするなじみの良さ、そして弦をスムーズに放てるなめらかさが必須とのことで、まさにコードバンはうってつけなんですね。

ちなみに、この「タブ」の裏面(手に当たる側)は、汗を吸って傷んだら交換できるように別の革を張ることもあるようで、その場合は当たりの柔らかいベロアや鹿革がよく使われるようです。

そこにも「革」があったのか、のクレー射撃

次にご紹介する意外な革の道具は、クレー射撃の「バレルレスト」。これはブーツの甲側に装着して使うもので、他のプレイヤーの射撃で待機している間、競技に使っている上下二連銃の筒先を傷めないよう、ブーツの甲に置けるようにした道具です。多くのものは馬蹄型の高い縁取りが付けられていて、筒先がずれないようになっています。

競技場によっては銃を置くための台が用意されていることもあるようですが、何より銃を持ってバレルレストに置いている姿が「カッコいい」というのも、よく使われている理由なのだとも。筒先は熱を持つため、耐熱性があってクッション性もある革製が多く使われているのだと思われます。

そういえばあそこに……の重量挙げ

お次は、ウェイトリフティング(重量挙げ)を見てみましょう。意外といいますか、いつでもはっきり見えているはずなのに、案外と観ている人の記憶に残っていないアイテムに革が使われているんです。それが「ウェイトリフティング・ベルト」です。

言われてみればという感じなんですが、重量挙げの選手で、お腹周りに太いベルトを巻いているのを観たことありませんか? あれ、お洒落で巻いているんじゃありませんよ(笑) あのベルトを腰にぴったり巻くことで腰と腹部の筋肉を支え、腹腔内圧を高め、脊椎を安定させて負担を軽減するというもの。それによってリフティング時の姿勢を改善し、全体的な運動効率を向上させるのだそうです。

このベルトにはさまざまな種類があるようなのですが、革製のものは耐久性の高さに加えて腰周りに対するホールド力に優れ、身体にフィットはするが緩みにくいのが特徴。頑丈さを求めてタンニン鞣しの革が使われることが多いらしいので毎使用ごとに手入れが必要だったり、職人の手づくりになるので高価だったりはするそうですが、使い勝手の良さに愛用者も多いそうなので、オリンピックで見付けたらバーベルと一緒に気分も上がりますね。

体操で唯一、革製の器具を使う競技って?

さて、ここで皆さまにクイズです。オリンピックではおなじみの体操競技ですが、今なお、器具に革が使われているのはどの競技でしょうか?

答えは、鞍馬(あんば)! そう、あの横長の細い台の上で演技を行う、玄人好みの競技ですね。実は、あの鞍馬の台には今もなお、本革が張られているのだそうです。しかも前回の東京五輪で使われた台には、国産のヌメ革が張られていたのだとか。ビバ、エイジング!

ちなみに、跳馬の台や平均台には今は合成皮革が使われていて、天然皮革は使われていないそうです。ではなぜ、鞍馬の台だけ今も天然皮革が用いられているのでしょうか? ちょっと調べただけでは分からなかったのであくまでも山添の憶測にすぎませんが……想像してみました。

まずは「鞍(くら)」という字が入るように、元々、馬の鞍をイメージした競技器具であるのが一つ。それだと実は跳馬も同じなのですが、跳馬は台に直接手を着いて飛び越す競技であるため、より滑りにくいよう合成皮革が使われるようになったと愚考します。一方で、鞍馬は基本的に台から出ている把手をつかむので、台は革のままで良かった……のではないかと。もし、理由をご存じの読者の方がいらっしゃいましたら、アンケートで教えてください。

スーパー競泳着の“元祖”はサメの皮

さて最後は、直接革が使われているわけではないのですが、豆知識としてのご紹介。2000年のシドニー五輪・競泳で、日本勢が銀・銅合わせて4つのメダルを獲得したのをご記憶の方はいらっしゃるでしょうか。その時に彼らの好成績を後押ししたのが、縫い目なしで体全体を覆う最新型の斬新な水着だったのですが、この水着にはもう一つ、ある生物の皮の構造にヒントを得た特徴がありました。

それはなんと、サメ。ザラザラしたサメ皮の「楯鱗(じゅんりん)」構造をヒントにし、生地表面にV字型の微小な突起を無数に埋め込んだというのです。こうすると、突起内に微細な渦が発生し、それが体表面の乱流を抑えながら浮力や推進力を向上させるのだそうです。

この効果はNASAの航空実験で実証されていたらしいのですが、水着に転用するのには実に4年もかかったとのこと。そんな苦心の末に完成したサメ肌水着だったのですが、あまりに高性能過ぎてその後、使用禁止になってしまったとか……さめざめ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。今回の特集、いかがでしたか? オリンピックともなると、さすがに器具やウェアはハイテク素材のオンパレード……と思いましたが、まだまだ革が使われている競技も残っていることが分かりました。他に面白い革の使い方がされている競技がありましたら、ぜひアンケートで教えてくださいね。

といったところで、次号の「徒然革」は、また届いてのお楽しみに。それでは、また4年後に(笑) Au revoir.(ごきげんよう)

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