CREATIVITY
土屋鞄の思いを革に込めた
「シグネチャーレイズド」
2023.9.21
革の魅力を引き出す、土屋鞄の新しい表現方法として生まれた「シグネチャーレイズド」。"T"の連続模様をあしらったこのパターンに込めたのは、「手にするたびに気持ちが満たされるような鞄をつくりたい」という、ものづくりの原点にはせた思いでした。
CREATIVITY
土屋鞄の思いを革に込めた
「シグネチャーレイズド」
2023.9.20
革の魅力を引き出す、土屋鞄の新しい表現方法として生まれた「シグネチャーレイズド」。"T"の連続模様をあしらったこのパターンに込めたのは、「手にするたびに気持ちが満たされるような鞄をつくりたい」という、ものづくりの原点にはせた思いでした。
「人生の節目に彩りを添える鞄」
をつくるために
土屋鞄のものづくりのルーツ、ランドセル。それは、「人生の節目に彩りを添える鞄」です。創業以来60年近くにわたってランドセルをつくり続けてきた私たちはいつしか、大人向けの鞄においても、ランドセルのように「人生の節目に彩りを添える鞄」をつくりたいと思うようになりました。
それをつくるために必要な素材・形・機能性を探る中で、革の魅力を引き出す表現方法の一つとして生まれたのが、「シグネチャーレイズド」です。人生の新たなスタートを切ったそのときから続いていく日々が、彩りで満ちるように。そして、手にするたびに革の表情が豊かさを増し、毎日見るたびに気持ちが満たされるように——目指したのは、そんな革の表現でした。
革の豊かな表情を最大限に引き出す。そのために私たちは、いろいろな技法や表情を検討しました。そうして最終的に行き着いたのが、集積のパターン(シグネチャー)を立体的に革に落とし込む(レイズド)ことで、見るほどに、使うほどにさまざまな表情を見せる「シグネチャーレイズド」という表現です。
土屋鞄の頭文字の"T"を単体で用いるのではなく、集積することにより、「素材の表情の一つのように」あしらう。それは、古くより規則性のある連続文様に願いや思いを託し、生活への彩りとして身に着けてきた日本人の美意識の表現でもあります。そんな"T"の集積を、エイジングで味わいを増す革に「レイズド」加工で立体的に浮き立たせることで、より豊かな表情を生み出し、「日々を重ねる豊かさ」を楽しんでいただきたいと考えました。
革の魅力を引き出す
立体的な表現の探求
しかし、この「レイズド」加工では、"T"字パターンを浮き出す型の形状や立体感をどうするかが、実は難問でした。実際に試してみると、浮き出しが高いほど"T"がくっきりと際立って見えるわけでもないことも判明。そこで、鞄に仕立てた際に最も魅力的に見える高さを探りながら、0.1mm単位で何度も繰り返し検討を重ねました。
次に難しかったのは、革の表情も浮き出しの形もしっかり残し、しかも使用に伴って少しずつなじんでいくように、"T"を浮き出すということです。そのために重要なのが、"T"の形を保持する裏張りの芯材の種類としなやかさ、浮き出し加工の時にかけるプレスの圧力の強さ、そして、プレスの際に加える熱の温度。これら全てについて、最適な加減が見つかるまで慎重に検証を続けました。
こうして誕生した「シグネチャーレイズド」を初めて採用したのが、「TSUCHIYA バックパック」です。ただし、立体加工を施した革を実際に製品へ取り入れるためには、縫製や漉き、組み上げなど、あらゆる工程で通常とは異なる微妙な調整が必要になりました。その上で、立体的な曲面の美しさを損なわないよう、緻密に計算して設計。凹凸のパターンを含む革を正確に縫製するのは決して簡単ではありませんでしたが、デザイナーと職人との綿密な共同作業で、美しい形に仕立て上げました。
日々を重ねる豊かさへの
思いを込めて
左:未使用、右:使用歴8ヶ月
一日一日が違って、変化に満ちている時間の集積は、豊かで感動に満ちている。そうした、繰り返し重なる人生の時間を思わせるような、豊かな表情を楽しめるパートナーになるように……「シグネチャーレイズド」に刻まれた"T"の連続文様には、土屋鞄のデザイナーのそんな願いも込められています。
愛用の時間を重ねて革の色つやが増すたび、革に動きが加わるたび、そして見る角度が変わるたび……「シグネチャーレイズド」は多彩にその表情を変え、使い手を飽きさせません。形を保つための固い芯材をあえて使わずに仕立てているので、使い込むことで革が柔らかくなじんでくるほど、立体が織りなす表情が豊かな変化を見せます。例えば、浮き出しの角が自然と丸みを帯びて滑らかにならされ、くったりとした表情に。そのような変化が革の表情として完全になじむときには、世界に一つの、使い手だけの顔になっているはずです。
このような「シグネチャーレイズド」加工を施した革を用いて、これまでにない表情や立体感のある鞄に仕立てた職人の“手”もまた、修練という、彼らの実直な日々の重なりがつくり上げた「集積」です。そうして生まれた新しいパートナーに、皆さまの日々の時間を豊かに重ねていただけたらうれしく思います。
PROFILE
プロフィール テキスト
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