わたしの愛する、古き良きもの
永く使うことで生まれる味わい、それが“patina”(パティーナ)。
時間と記憶を共有してきた味のある愛用品を、土屋鞄スタッフがご紹介します。
わたしの愛する、古き良きもの
永く使うことで生まれる味わい、
それが“patina”(パティーナ)。
時間と記憶を共有してきた味のある愛用品を、
土屋鞄スタッフがご紹介します。
STAFF / YUKIKO SEKIGUCHI
愛用歴3年
雨の日の気分を上げてくれる、男前な傘。
お気に入りの傘が一つあるだけで、雨の日はうんと楽しくなる。それを人生で初めて教えてくれた、職人仕立てのブラウンの傘。この傘と出合うまでは、服や靴が濡れてしまうし、クセ毛の髪が言うことを聞かなくなるし、雨の日はたいてい憂鬱だった。でも、この傘を差して歩き出すと、そんな下がり気味な気持ちはいつの間にか吹き飛んでいて、「雨の日も良いものだよなあ」なんて、軽い足取りで歩いている自分がいる。
傘にこだわりを持ったきっかけは、昔、デート中に傘のビニール部分が剥がれて飛んでいってしまい、恥ずかしい思いをしたから。その時に「男として、きちんと良い傘を1本持っておこう」と心に決めた。そうして僕の前に現れたのが、この傘だ。まさに一目惚れだった。襞(ひだ)まで美しい艶のある生地に、それを引き立てる、太くて男前な手元。どのパーツにも職人の丁寧な技が光っていて、人の手から生まれたものだけが持つ、何か品のようなものに強く惹きつけられてしまった。
自分の持ち方のクセまで刻まれてゆく、真鍮のボールペン。
3年前のクリスマスにプレゼントされた、真鍮製のボールペン。蔵前にある文具店「カキモリ」で目にし、その愛らしい形と真鍮の質感、そしてすらすらと流れるような書き味に惚れ込んで以来、ずっと欲しくて憧れていた。キャップは元々なかったので、1年前に後輩がつくってくれたもの。それがまた気に入って、ますます手放せなくなっている。
最初は古美仕上げの濃茶色だった胴軸は、まず六角形の角が擦れ、さらにいつも持つところが次第にかすれてきて温かな真鍮の地が覗いてきた。自分でも意識していなかった持ち方のクセが、そうした味わいとなって表れてくるのが面白い。革のキャップもだいぶ馴染んできて、表面には艶が出てきた。真鍮と革がエイジングの競争をしているようで、毎日見るのが楽しい。
リフィル(替芯)は、後ろにねじ込まれた栓を専用の六角レンチでぐるぐると回して外し、取り替える。面倒なようだけど、実はこのひと手間がとても楽しい。つくり手の遊び心を感じるし、栓がネジ山を昇り降りするときの僅かなきしみが手に心地よい。
このペンは見た目だけでなく、持ち心地にも味わいを感じて全然飽きが来ない。あまりに自分の日常に馴染みすぎて、気づけば休日もポケットやポーチに入れて持ち歩いている。地の真鍮が渋い風合いになるまで、ずっと手にしていたいと思う。