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ものづくりやデザインに、
想いを込める「つくる人」。
ライフスタイルに合わせた使い方や、
自分らしい革の表情を味わう「楽しむ人」。
2人の想いが詰まった鞄を囲んで、それぞれの目線から、
その鞄にまつわるストーリーを自由に語り合います。

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ものづくりやデザインに、想いを込める「つくる人」。
ライフスタイルに合わせた使い方や、
自分らしい革の表情を味わう「楽しむ人」。
2人の想いが詰まった鞄を囲んで、それぞれの目線から、その鞄にまつわるストーリーを自由に語り合います。

Vol.1
「トーンオイルヌメ
ソフトバックパック」


今回は、「トーンオイルヌメ ソフトバックパック」について
愛用者の堤さんと、デザインを担当した舟山が語り合います。

傷や汚れも、
一緒に過ごしてきた時間の証


舟山
こちらが、堤さんが愛用されている「ソフトバックパック」ですよね。こうして新しいものと2つ並べてみると、随分と味が出ているのが分かります。どのくらい使われているんですか?

堤さん
そうですね。2011年ごろに購入したので、今年で8年の付き合いになります。2つ並べてみると、こんなにも色の違いや革のくったりとした感じが、はっきりと分かるんですね。

▲ 左)新品の製品 右)8年愛用されている堤さんのバックパック


舟山
ここまで味が出たものは、私でもなかなか見かけませんよ。

堤さん
仕事での使い方が大きいと思います。私は住まいの屋外について、デザイン学の観点から研究をしているので、調査をするために外で仕事をすることが多いんです。現場では雨風や砂ぼこりにさらされますし、木に引っかかったりすることもあって・・・。本当に気に入っているので、雨の時は、市販の雨避けカバーを掛けて使っています。でも、どうしてもハンドルの部分は濡れてしまうので、また違った味わいになっていますね。

舟山
雨に打たれたこともあってなのか、こんがりと焼き色がついたような、堤さんならではの表情になっていますよね。傷や汚れを気にして、ナイロン製のものなどを選びそうですけど・・・?

堤さん
私はその傷や汚れを、むしろ味として楽しみたかったんです。そんな鞄がないか探した結果、このバックパックにたどり着きました。

舟山
そうだったんですね! この製品は、10年ほど前に開発されたものですが、「トーンオイルヌメ」シリーズの中で“一番革の存在感を楽しめるもの”をつくろうというコンセプトがあって。男性や女性にも持ちやすくて、どんな時代にも違和感なく持っていただけるようなデザインを意識しています。

堤さん
今でこそ、女性がバックパックを背負っている姿をよく見かけますが、購入した当時はめずらしかったと思います。勤務先の大学では、学生から「それどこの製品ですか?」って聞かれたりもするんですよ。


▲ 台湾で調査をする堤さん

堤さん
国内だけではなくて、海外のいろんなところにも連れて行っています。実は去年ドイツに行ったときに、このバックパックを背負っていたら現地の人に「これいいね」って呼び止められたんです! しかもそれが1回ではなくて、何回かあって。

舟山
堤さんが使ってきた歴史がオーラとして、その鞄に宿っているのかもしれませんね。



ひもを活用する、こだわりの使い方



舟山
「トーンオイルヌメ」シリーズは、お客さまが自分らしく、自由に使って楽しんでいただけるように、旅をテーマにカタログなどで紹介していた時期もありました。海外旅行の時も一緒に連れて行かれたとのことですが、盗難などを心配して、バックパックを避けようとは思わなかったのですか?

堤さん
私も海外旅行は難しいかなって初めの頃は思っていました。でも、どうしてもこれで行きたくて・・・。他にも鞄はありますが、やっぱり使い慣れたものがいいんですよね。なので、どうにかして行けないか、私なりに試行錯誤してみた結果、対策を編み出したんです!

こうしてサイドファスナーの取っ手の部分に、口を縛るひもを通してみると・・・。

舟山
すごい! 堤さん流の海外仕様ですね。

堤さん
はい。実は、このひもって他にも活躍してくれて。例えば、フィールドワークには帽子を被って行くのですが、風が強くて飛ばされそうな時とか帽子をしばらく取る時は、ひもを使ってバックパックに結んでいます。

舟山
本当に、堤さんのバックパックという感じですね。使い方にアレンジが効いていて面白いです。

舟山
人によって、それぞれの使い方はありますよ。例えば、この帽子のようなふたの部分、かぶせと言いますが、ここにストールを挟んだり。

堤さん
私もします! この立体的な形だからこそ、バックパックが荷物でいっぱいの状態になっても、被せておけば形が引き締まるというか、とりあえず大丈夫かなって思っています。

舟山
このソフトバックパックのポテンシャルを、最大限に発揮している感じがします。堤さんお気に入りのかぶせですが、バックパックなどは、一枚の革でつくられた平面状のものが多いかと思いますが、あえて帽子のような立体的なデザインにしました。

堤さん
なかなか他にはないデザインですよね。カポってかぶるような帽子のような。



手描きの図面に込めた想い



舟山
これは、バックパックをデザインした当時の図面です。

堤さん
これが! 手描きなんですね。

舟山
はい。実寸で絵のように描いています。「トーンオイルヌメ」シリーズの特徴である革の柔らかさであったり、「こうあって欲しい」という私の思いを図面に込めて、職人さんと話し合いながらつくりあげていきます。

堤さん
なるほど。昔、建築で使われていた、畳んでいくと立体的な図面になる「起こし絵」に近いですね。職人さんとやり取りをしながら進めていくところがすごいですね!

舟山
実は、このかぶせの部分だけで鞄一つ分に相当する技術量なんです。トートなどの鞄に比べてパーツが多く、いろいろなところに手間がかかっていて・・・。なので、たくさん製品をつくることが難しいんです。

堤さん
そんなにつくるのが大変だったとは・・・。なんだかより可愛く見えてきました。私はあと、背中にあたる部分もお気に入りです。表の革と違ってしっとりと柔らかいので、仕事の時は画板をここに挟んでいます。

舟山
ええ! 画板をですか?

堤さん
そう! なので、画板を挟んだまま先方に挨拶をしたりしていますね。とてもフィットすることにも関係しているのかもしれません。使っていくうちに、クッションの部分が自分の体になじんだものになってきました。

舟山
この部分は背あてと言うのですが、ここは汗をかいても大丈夫なように、子どものランドセルと同じ素材の革を採用しています。表の革は、経年変化を楽しめるように。適材適所に使い分けてつくっているんですよ。

堤さん
なるほど、そのような工夫があったんですね。長く使っていると、表と裏の革の違いが結構出てきて。風合いとして楽しめるようになってきました。

舟山
使いながら発見されたんですね。それって風合いを感じる面白さですよね。



ご自身のスタイルに合わせて、バックパックを使いこなしている堤さんのお話に、舟山をはじめスタッフも驚きの連続。終始笑顔に包まれた、楽しい対談となりました。


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堤 涼子さん
デザイン学研究者
住まいの屋外空間(ニワ)を、生活者のデザインといった観点から研究。多摩美術大学の助手、大学や市民講座の講師など、幅広い分野で活躍している。

舟山 真利子
土屋鞄製造所 デザイナー
「トーンオイルヌメ ソフトバックパック」をはじめ、 メンズからウィメンズまで、幅広い土屋鞄製品のデザインを手掛ける。

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