土屋國男が上京し、学生鞄とランドセルの製造会社に入ったのは15歳の時でした。親方は「本物をつくる」が口癖で革へのこだわりが強く、何よりも丈夫さを重視する職人。そんな親方から革の扱い方をひたすら叩き込まれることで、「本物」とは何かを理解していきました。「ただ作業を覚えるのではなく、その奥にある意味を考えながら『修得する』ことを学んだ」という日々の中で、技術だけでなく、人としてのありようも教わったという修行時代。その時間が、今も土屋國男の大きな財産になっています。
そうして地道に経験を重ねて12年。「職人として、自分の腕を試してみたくなった」と独立を果たしたのが、27歳の時でした。出発は、自宅内の11坪の作業場。経験の少ない分を数つくることでカバーしようと死ぬ気で働き、「夢中になって腕を上げようとした」と振り返ります。熟知した革という素材を使い、親方仕込みの丈夫なつくりを旨としてランドセルをつくり続ける土屋國男に、最初の転機が訪れます。