2023.11.03
【徒然革】
なぜ土屋鞄は「ヌメ革」が好き?
日常生活の役に立たない、
マニアックな革のうんちく知識を
気ままにつぶやく
「徒然革(つれづれがわ)」
つれづれなるままに日暮らし、
PCに向かひて、
心にうつりゆく革のよしなしごとを
そこはかとなく書きつくれば、
あやしうこそ革狂ほしけれ——
かつて「副店長」の肩書で、数々のマニアックな革のうんちくコラムを担当した古参スタッフが、日常生活の役に立たない、知るだけムダな革や鞄の小ネタを気まぐれにお届けします。
今回は、土屋鞄で幅広く使われている人気素材「ヌメ革」について、革フェチ目線で解説。あたたか~い白湯を飲みながら、どうぞご笑覧ください。
土屋鞄で最もよく使われている素材
「ヌメ革」
革「ナチューラ」「ヌメ」「ブラックヌメ」「ホームコレクション」の各シリーズや、「OTONA RANDSEL 001wide」……土屋鞄でこれまで最も幅広く使われてきた人気の素材といえば、何といっても「ヌメ革」でしょう。土屋鞄には子ども用のヌメ革製ランドセルもあり、長くお付き合いいただいているお客さまにもなじみ深い素材だと思います。
ところでこの「ヌメ革」という言葉、一体どういう意味なのでしょうか。
漢字では「𩊠」「𩊠革」「滑革」などと表記されることもありますが、「𩊠」は「鞄」と同じく、どうも国字(和製漢字)っぽいですね。ちなみに「ぬめ」と読む漢字には他に「絖」があり、これは「表面が滑らかで、光沢のある絹織物」を意味するのだとか。なんかこの糸偏を革偏に替えて勝手につくったような気も……そうすると言葉の意味的には「表面に、絹のように滑らかな光沢感のあるスムース調の革」という感じでしょうか。
実はこの「ヌメ革」という言葉、日本独特の概念の可能性もあるんです。
例えば、英語で「ヌメ革」を調べてみると一応"case leather"(箱革?)とか出てくることは出てくるのですが、日本の「ヌメ革」にズバリ当てはまる言い方がありません。あとは"vegitabule tanned leather"(植物で鞣された革)のような言葉もヒットしますが、これだと意味があまりに広すぎます。ちなみにChatGPTで聞いてみたら、「ヌバック」(表面を起毛した革)と勘違いしていました。「ヌ」に引きずられたのでしょうね。まだまだ、人間は負けてません(笑)
土屋鞄の「ヌメ革」の特徴
閑話休題。さて、それではなぜ土屋鞄は「ヌメ革」を多用しているのでしょうか。土屋鞄には「時を超えて愛される価値をつくる」という、創業以来のものづくりの思いがあります。この思いを実現するために大切にしている3つの要素が「Craftsmanship」「Creativity」「Timeless」ですが、「ヌメ革」は、そのうちの特に「Timeless」にとても良くフィットする素材だからです。
「Timeless」であるためには、飽きが来ることがなく、むしろ使うほど愛着が湧いてくることが大事な要素。このことを、土屋鞄の「ヌメ革」にどんな特徴があるのか紐解きながらご説明しましょう。
1)ナチュラルな上質感
「ヌメ革」の特徴として真っ先に思いつくのが、いかにも革らしい、素朴だけど品のあるナチュラルな上質感。そこにバラキズやトラなどの多様なナチュラルスタンプが加わり、「飽きの来ない」豊かな風合いと表情を生み出します。
永く愛用できるためには、それに耐えうる丈夫さが必要。「ヌメ革」はタンニン鞣しで繊維が引き締められているので、革質が丈夫。適切な手入れを続ければ10年20年と使うことができます。
3)エイジングの楽しみ
「ヌメ革」は愛用の時間とともに色が深みを増し、表面には滑らかなつやが現れ、何とも言えない味わい深い風合いと表情になります。また、使い方に合わせてだんだん柔らかくなじんでくるので、手にするたびに愛着が湧いてくるはずです。
土屋鞄の「ヌメ革」の生かし方
というわけで、土屋鞄のものづくりに欠かせない存在となっている「ヌメ革」ですが、土屋鞄はこの革を使い続けて20年以上経ちます。そんな土屋鞄が「ヌメ革」の魅力を最大限に引き出すために採用している方法論が、以下の2つです。
①シンプルなデザイン
余計な装飾のないシンプルなデザインにすることで、革のナチュラルな上質感が最大限に引き立ちます。
なるべく大きな面で革を取り入れることによって、豊かな表情とエイジングを存分に楽しめます。