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【徒然革】
革を語るメルマガ:
革の「日焼け」は味になる

2025.7.31

日常生活の役に立たない、
マニアックな革のうんちく知識を
気ままにつぶやくメルマガ
「徒然革(つれづれがわ)」

つれづれなるままに日暮らし、
PCに向かひて、
心にうつりゆく革のよしなしごとを
そこはかとなく書きつくれば、
あやしうこそ革狂ほしけれ——

 

かつて「副店長」の肩書で、数々のマニアックな革のうんちくコラムを担当した古参スタッフが、日常生活の役に立たない、知るだけムダな革や鞄の小ネタを気まぐれにお届けします。

 

今回の革メルマガでは、夏の日差しがもたらす革の「日焼け」について詳しく解説。

良く冷えた経口補水液(グレープフルーツ風味)でしっかりと水分を補いながら、ゆるりとご笑覧ください。

Person's portrait with text in Japanese about their background and philosophy.

そもそも「革の日焼け」とは?

Bright sun shining in a clear blue sky.

革製品を長く使われたことがある方はきっとご経験があるかと思いますが、日当たりの良い所に置いていた革の鞄の色が変わってしまったり、褪せてしまったりしたことがありませんか? あれがまさに革の「日焼け」。簡潔に定義すると「主に日光によって引き起こされる革の色や風合いの変化」という感じでしょうか。実は室内光でも起きるのですが、何といっても効果が大きいのが日光です。

この変化は、革に含まれている鞣し剤(主にタンニン)や油脂分、革に浸み込んでいる染料や表面の顔料が太陽光の紫外線と熱に反応するのが原因とされています。そのため、革によってその変化の質・量が大きく異なるのが特徴です。

革の「日焼け」の仕組み

例えば、ヌメ革に代表されるタンニン鞣しの革の場合、革に含まれるタンニンが日光の紫外線と熱で酸化することによって赤味や黄色味を帯びてきます。また、日光の熱で革が温められることで革の油脂分が表面に滲み出し、それが空気に触れることで酸化が促進され、色が濃くなったりつやが出たりすることもあります。ただし、染色されている革は逆に日焼けで退色することもあり、変化の仕方は革ごとにまちまちです。

一方、クロム鞣しの革ではタンニンがほとんど含まれないことと、多くの場合、表面が顔料で覆われてオイルが表面に染み出しにくいことから、どちらの反応もあまり起きません。その代わり、表面の顔料が紫外線の影響で変色したり退色したりすることがあります。これも「エイジング」と言えばそうなのですが、一般的に好まれる変化のし方ではないので、クロム鞣しの革はあまり日焼けさせない方が良いと思われます。

またどちらのタイプの革でも、日光に長時間当てると革に含まれる水分と油脂分が飛んでしまい、退色するだけでなく革が乾燥してカサついてしまったり、傷んでしまうことがあります。これは熱による効果でもあると考えられます。

「日焼け」でエイジングさせる際の注意

このように、革に少なからぬ影響を及ぼす「日焼け」ですが、タンニン鞣し革の場合、上手く利用することで味わい深いエイジングにつなげることができます。ここで大事なのがオイルケア。人間の肌の日焼けがそうであるように、革の日焼けにもケアが必要なんです。人肌で言えば、化粧水や乳液を塗るイメージでしょうか。

先述の通り、直射日光で日焼けをさせると、熱もあって革の水分や油脂分が飛んでしまうため、表面がかさついてしまうことがあります。そのため、長時間日光を浴びさせたらオイルケアをしてあげるのが優しさ。この際のオイルは、油脂分と同時に水分もしっかり補充できる「コロニル シュプリームクリームデラックス」がおすすめです。

左が新品、右が日焼け+オイルケア
「Plain-nume 楽しみ方研究会≪前編≫」より

日焼けの前後いずれかに適度な潤いと油脂分を補充することで、退色ではなく、エイジングが深くなるというメリットが生まれてきます。ただし、直射日光に当たって乾燥している革はオイルがいつもより染みやすくなっているので、塗りムラができないようにご注意。ファーストタッチではいつもよりオイルの量を気持ち少なめにし、様子を見ながら全体に塗っていくようにしましょう。

もう一つ気を付けたいのは、エイジングに偏りをつくらないこと。特に鞄の場合、常に同じ側を外側にして持ち歩いていると、表と裏で味の出方が全然違うなんてことが起こりがちです。

日差しの強い夏は一日持ち歩くだけでも思った以上に日焼けしますので、時々表裏を替えてみるなど、日焼けを均等にする工夫ができるとさらに良いです。マニアックに、片面だけ焼くのもありですが(笑)

以上のように注意は必要ですが、こうしてケアをしながら日焼けをうまく利用すると、より良い味わいに育てられる可能性が高まります。もちろん、日焼けなしでじっくりエイジングさせるのも良いのですが、日焼けを取り入れたエイジングは何とも言えない味わい深さが出てきます。

個人的な話で恐縮ですが、私は愛用の鞄を何度も南米旅行に携え、歩き回りながら現地の強烈な太陽を利用してガンガンにエイジングさせたことがあります。今なお自慢の味出しアイテムで、この鞄を見るたびにペルーやボリビアの太陽を思い出します。皆さまもこの夏、日焼けを利用したエイジングにチャレンジしてみてはいかがですか。

筆者が南米の太陽で焼きまくった「トーンオイルヌメ ジップトップショルダー(ブラウン)」(廃版品)


最後までお読みいただき、ありがとうございます。今回の「日焼け」特集、いかがでしたか?

革好きの方でも夏になるとレザーバッグをあまり使わなくなる傾向がありますが、実は革のエイジングを進めるには格好のシーズン。適度な日焼けとしっかりとしたケアで、ぐーんと味々になるかもしれません。一度、試してみてはいかがでしょうか。

といったところで、今号はここまで。次号の「徒然革」では、簡単な革の日焼け実験をしてみますので、どうぞお楽しみに。それでは、またお会いしましょう。とっぺんぱらりの、ぷう。


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