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【アタリ】
Pressure mark

革の財布に、中の硬貨やカードの形が浮き出たことはありませんか。革に固いものを押し当て続けると、その形が革に残ることがあり、これを「アタリ」と呼んでいます。アタリが出やすいのは、線維が馴染みやすいタンニン鞣しの革。なかでも、「トーンオイルヌメ」シリーズに使われる「オイルヌメ革」や、「ディアリオ」シリーズの「オイルメロウレザー」のように油脂を豊かに含む柔らかな革は、特に出やすくなっています。

アタリは使い方によって出方が異なり、持ち主だけの表情を刻むので、二つと同じものがありません。またコードバンのように肌目の細かい革や、油脂を多く含む革は、アタリの角が滑らかになるため、よく使い込まれた印象を見る人に与えます。

【色落ち・色移り】
Color dulling, Color transfer

革を構成するコラーゲン線維はその性質上、染料を強く定着させることが難しい素材です。そのため、強い摩擦や水濡れ、長い接触で革の色が落ちたり、他のものに移ったりします。これが「色落ち・色移り」です。反対に、他の素材の色が革に移ってしまうこともあり、これも色移りと呼びます。

特にヌメ革などのナチュラルな仕上げの革は、風合いを守るために色止め加工をしない場合、色落ち・色移りをしやすくなります。またエナメルレザーは、表面が樹脂に覆われているので色落ちをすることはあまりありませんが、他の素材から色が移りやすい革となっています。

【銀浮き】
Loose grain

革は基本的に、表面にある銀層と、その下で線維状になっている真皮層という2層の構造です。この2層の結合は、牛革では比較的強いのですが、動物の種類によってはかなり緩い場合があります。また同じ動物でも、腹部や脇のように、他よりも結合の緩い部位があります。

そういう革では、折り曲げが繰り返されたり、水がしみたりすると銀層が真皮層からはがれ、浮いた状態になることがあります。これが「銀浮き」で、ぷっくりと膨らんだものから細かなシワにしか見えないものまで、見た目は様々です。よく見られるのは靴の甲に出る折りジワの中ですが、銀層のないコードバンや、革の裏面を使うスウェード、ベロアなどでは、銀浮きが起こりません。

【プルアップ】
Pull-up

オイルを多量に染み込ませた革は、裏側から指などで押し上げると、革に含まれるオイルが染料とともに周囲に逃げて、色が薄く変わります。これを「プルアップ」といい、揉んだり折り曲げたりしたときにも同じことが起きます。

プルアップする革は、折り曲げられたり圧力がかかったりするたびにその部位の色が変わり、革の表情に豊かな変化をもたらします。その性質を活かしてもみ加工やシワ加工されたものは全体に濃淡の模様が入り混じり、ワイルドな表情を生み出します。

【ブルーム】
Bloom

オイルやロウを染み込ませた革の表面に噴き出てくる、細やかな白い粉。これが「ブルーム」です。特にブライドルレザー(Bridle leather)というロウ引き革は、タロウ(tallow)という特殊なロウが大量に含まれているため、表面を覆うほどのブルームが出ることもあります。またオイルを多めに含む革にも、うっすらと出ることがあります。

ブルームは、手の指や柔らかい布などで優しく擦り込むと革の中に戻ります。量が多い場合には、柔らかいブラシなどで落としても良いでしょう。ただしブライドルレザー製品では、ブルームが他の革とは違う重厚感や格調の高さを醸し出すため、あえてそのまま使い続ける持ち主も少なくありません。ブルームを自然に落としながらエイジングを楽しむのも、ブライドルレザーでは楽しみの一つになっています。

【焼ける・退色】
Leather-burnt/color fading

日光などの光線や熱によって革の色が濃くなることを、「焼ける」と言います。これは、革に含まれているタンニンや油脂が、光や熱の作用で酸化して濃い色に変わるため。焼ける色合いや速さは、当てられる光線や熱の強さ、タンニンやオイルの種類・量によって変わり、エイジングを促します。

一方、革を着色する顔料や染料の中には、日光や電灯などの光線で色が褪せたり、薄くなったりするものがあります。これが、「退色」です。とくに直射日光の当たる場所に長時間保管すると退色しやすいので、発色の美しい革製品はなるべく光線を避けて保管するのがおすすめです。


次回のテーマは
「革の加工」です。