Tone OILNUME
「トーンオイルヌメ」シリーズが生まれてから、今年で15年。数あるシリーズの中でも、土屋鞄にとって特別な思いのあるシリーズです。それは、理想とする革の開発から始めたものだから。ここでは「オイルヌメ革」の誕生秘話をご紹介します。
Tone OILNUME
「トーンオイルヌメ」シリーズが生まれてから、今年で15年。数あるシリーズの中でも、土屋鞄にとって特別な思いのあるシリーズです。それは、理想とする革の開発から始めたものだから。ここでは「オイルヌメ革」の誕生秘話をご紹介します。
ずっと、触っていたくなる革
それは、理想の革づくりから
始まりました
今から15年ほど前、まだ小さな工房だった土屋鞄では、新しい“顔”となるシリーズのための革をつくろうとしていました。目指したのは、ナチュラルな風合いを持ちながらうっとりするほど柔らかく、手触りの優しい“ずっと、触っていたくなる革”。それはいわば、“柔らかいヌメ革”というものでした。
牛の皮を植物の渋を使って鞣し、表面を滑らかに仕上げた素朴な革が「ナチューラ」シリーズの「ヌメ革」です。革らしいナチュラルな風合いで、時間とともにエイジング(経年変化)を見せるため、当時、人気が高まっていました。ただし、この「ヌメ革」は線維が強く引き締っているので、非常に固いのも特徴です。そのため、デザインや製法に大きな制限がありました。
固いヌメ革を、柔らかくするために
固い革を柔らかくするには、いくつかの方法が考えられます。一つは、革に含ませるオイルの量を増やすこと。オイルをたっぷりと含ませることで革の線維がしなやかになり、線維同士の締まりもほぐれてきます。一方でオイルが多すぎると、革が伸びやすくなったり、コシが弱くなったり、色落ちしやすくなったりするので、バランスの見極めが大事。最適なオイルの量は革質との相性などもあって、実際につくってみないとわかりません。何十枚とサンプルを仕上げて、試行錯誤を繰り返しました。
固いヌメ革を、柔らかくするために
固い革を柔らかくするには、いくつかの方法が考えられます。一つは、革に含ませるオイルの量を増やすこと。オイルをたっぷりと含ませることで革の線維がしなやかになり、線維同士の締まりもほぐれてきます。一方でオイルが多すぎると、革が伸びやすくなったり、コシが弱くなったり、色落ちしやすくなったりするので、バランスの見極めが大事。最適なオイルの量は革質との相性などもあって、実際につくってみないとわかりません。何十枚とサンプルを仕上げて、試行錯誤を繰り返しました。
もう一つの方法は、革を揉み込むこと。紙をくしゃくしゃに揉み込むと柔らかくなるように、革も揉み込むと線維がほぐれて、ふっくら柔らかく仕上がります。革を揉み込むにはいくつかの方法がありますが、最もよく行われるのは「空打ち」という方法。革を「太鼓」と呼ばれる大きな回転ドラムに入れてかくはんし、揉みくちゃにすることで柔らかくするのです。
土屋鞄は、この両方を使って革を仕上げてもらえるよう、タンナーに依頼しました。オイルをたっぷりと加えて、空打ちにかける。そうした革は皮革先進国の欧米では普通にありましたが、当時の日本にはまだあまりありませんでした。
もう一つの方法は、革を揉み込むこと。紙をくしゃくしゃに揉み込むと柔らかくなるように、革も揉み込むと線維がほぐれて、ふっくら柔らかく仕上がります。革を揉み込むにはいくつかの方法がありますが、最もよく行われるのは「空打ち」という方法。革を「太鼓」と呼ばれる大きな回転ドラムに入れてかくはんし、揉みくちゃにすることで柔らかくするのです。
土屋鞄は、この両方を使って革を仕上げてもらえるよう、タンナーに依頼しました。オイルをたっぷりと加えて、空打ちにかける。そうした革は皮革先進国の欧米では普通にありましたが、当時の日本にはまだあまりありませんでした。
土屋鞄の新しい顔になる、
“ずっと、触っていたくなる革”の誕生
鞣し方の工夫やオイルの量の調整、太鼓の最適な回転スピードや時間の見極め・・・タンナーによる連日の試行錯誤の末、ついに土屋鞄が理想とする柔らかさの革が仕上がりました。
結局、革に含ませたオイルの量は、通常の約3倍。できた革はしっかりとコシを残しながら、おろしたての革とは思えないほどふんわり柔らかです。いつまでも触れていたくなるほどしっとり優しい手触りに、初めて手にしたデザイナーや土屋鞄のスタッフたちは、思わず「わあっ」と歓声を上げました。
土屋鞄の新しい顔になる、
“ずっと、触っていたくなる革”の誕生
鞣し方の工夫やオイルの量の調整、太鼓の最適な回転スピードや時間の見極め・・・タンナーによる連日の試行錯誤の末、ついに土屋鞄が理想とする柔らかさの革が仕上がりました。
結局、革に含ませたオイルの量は、通常の約3倍。できた革はしっかりとコシを残しながら、おろしたての革とは思えないほどふんわり柔らかです。いつまでも触れていたくなるほどしっとり優しい手触りに、初めて手にしたデザイナーや土屋鞄のスタッフたちは、思わず「わあっ」と歓声を上げました。
柔らかさと手触りの良さに加えて、この革には他にも特徴がありました。オイルをたっぷりと含むことで風合いが味わい深くなり、まるで何年も使い込んだようなアンティックな雰囲気に。革とオイルの混じり合った匂いも良く、エイジングもより味わい深いものになりました。
また空打ちをしたことで表面に無数のシボが刻まれ、表情がとても豊かに。牛の身体の部位によってシボ模様の大きさや深さが変わるので、一枚一枚の革が二つとないものになり、より愛着のわきやすい革になりました。
こうして、ナチュラルな風合いを持ちながら、しっとりと柔らかな“ずっと、触っていたくなる革”が誕生しました。当時の日本ではまだ珍しい、シボ模様のついた柔らかなタンニン鞣し革は、まさに“土屋鞄だけの革”。この革がデザイナーの創作意欲を刺激し、土屋鞄の新しい定番シリーズを生み出すことになるのです。