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知れば知るほど、奥が深い革の世界。思わず誰かに話したくなるような、
革などにまつわるエピソードや
まめ知識を連載でお届けします。

知れば知るほど、奥が深い革の世界。
思わず誰かに話したくなるような、

革などにまつわるエピソードや
まめ知識を連載でお届けします。

「こどもの日」の菓子といえば、餡入りの餅をかしわの葉で包んだ「かしわ餅」でしょう。この「かしわ(柏)」はブナ科のドングリの木で、本来の漢字は「槲」。英語でいうオークの木の仲間ですが、この木は世界各地で良質なタンニンの原料として珍重されてきました。日本でも、かつては漁網の渋染めや革の鞣し剤として貴重な資源であり、1877年の第一回内国博覧会でも特産品として出品されるほどでした。

日本では槲のタンニンは樹皮から採っていましたが、古代エジプトでは、槲の芽にできた「没食子(もっしょくし)」という虫こぶ(gall)も鞣し剤として使われました。これはタマバチという寄生蜂が産卵した部分にタンニンが凝集してこぶになったもの。樹皮よりもタンニン濃度が高いため非常に貴重な鞣し剤であり、水溶液が鉄分と反応すると黒くなるためインクの材料にもなりました。

日本を代表するアート・浮世絵に、サメの皮が必要だと聞いたら驚かれますか? 実は浮世絵を刷る際に使う刷毛の手入れ「刷毛おろし」に、カスザメというサメの皮が使われるのです。これはサメ皮の細かく鋭い鱗(うろこ)で刷毛の毛先を割き、ふんわり柔らかな枝毛にするため。これによって染料が刷毛に乗りやすくなり、繊細な作業がやりやすくなるのだそうです。

刷毛おろしは、まず火で毛先を炙ることからスタート。それからその毛先を水で濡らし、板に張ったサメ皮で擦ります。このとき、鱗(うろこ)が生えている向きに逆らうように、尾から頭の方に向かって動かすのがコツです。面白いのは、すし屋さんのワサビおろしとは違い、丸々1匹分を板に張るということ。全長は1m以上あるそうなので、かなり見事な物でしょうね。

古代の「紙」と言えばエジプトのパピルスが有名ですが、欧州では気候的に傷みが早かったため、貴重な書物・証書には「羊皮紙」が使われました。これはその名の通り、主に羊の鞣していない皮でつくられるもので、2,200年ほど前にトルコで生まれたと言われています。その製法は長く、職人組合(ギルド)の秘法でした。

羊皮紙の中でも最高級とされるのは「vellum(ヴェラム)」と呼ばれるもので、子羊や子牛の皮からつくられます。これはとても薄くて丈夫な上、きめが細かく書き味がなめらかなので、非常に珍重されました。羊皮紙は中世以降、中国から入ってきた紙が普及してあまり使われなくなりましたが、1,000年以上保管できるといわれるほど保存力が高いため、今なお外交や儀礼の文書用に使われているそうです。

動物の皮は鞣して「革」にする以外に、古くから接着剤をつくることにも使われました。それが「膠(にかわ)」と呼ばれるものです。これは牛などの動物の皮に水を加えて煮込み、それをろ過して乾燥させたもので、ゼラチンが主成分。5,000年以上前から利用されていたようで、ツタンカーメン王の副葬品の家具にも使われていました。日本には7世紀初め頃に大陸から伝わったようです。

膠(にかわ)は木材を極めて強力に接着するため、家具や武具の製造に使用されました。また蒸気を当てるときれいに剥がれるため、バイオリンなど補修や調整の多い木製楽器の製作に今でも重宝されています。一方で、中国や日本では墨の、欧米では絵の具の練り材にも使われ、ウサギの皮が最高級品とされました。なお日本での膠(にかわ)の製造は、革の製造と同じく姫路市に集中しています。

「こどもの日」の菓子といえば、餡入りの餅をかしわの葉で包んだ「かしわ餅」でしょう。この「かしわ(柏)」はブナ科のドングリの木で、本来の漢字は「槲」。英語でいうオークの木の仲間ですが、この木は世界各地で良質なタンニンの原料として珍重されてきました。日本でも、かつては漁網の渋染めや革の鞣し剤として貴重な資源であり、1877年の第一回内国博覧会でも特産品として出品されるほどでした。

日本では槲のタンニンは樹皮から採っていましたが、古代エジプトでは、槲の芽にできた「没食子(もっしょくし)」という虫こぶ(gall)も鞣し剤として使われました。これはタマバチという寄生蜂が産卵した部分にタンニンが凝集してこぶになったもの。樹皮よりもタンニン濃度が高いため非常に貴重な鞣し剤であり、水溶液が鉄分と反応すると黒くなるためインクの材料にもなりました。

日本を代表するアート・浮世絵に、サメの皮が必要だと聞いたら驚かれますか? 実は浮世絵を刷る際に使う刷毛の手入れ「刷毛おろし」に、カスザメというサメの皮が使われるのです。これはサメ皮の細かく鋭い鱗(うろこ)で刷毛の毛先を割き、ふんわり柔らかな枝毛にするため。これによって染料が刷毛に乗りやすくなり、繊細な作業がやりやすくなるのだそうです。

刷毛おろしは、まず火で毛先を炙ることからスタート。それからその毛先を水で濡らし、板に張ったサメ皮で擦ります。このとき、鱗(うろこ)が生えている向きに逆らうように、尾から頭の方に向かって動かすのがコツです。面白いのは、すし屋さんのワサビおろしとは違い、丸々1匹分を板に張るということ。全長は1m以上あるそうなので、かなり見事な物でしょうね。

古代の「紙」と言えばエジプトのパピルスが有名ですが、欧州では気候的に傷みが早かったため、貴重な書物・証書には「羊皮紙」が使われました。これはその名の通り、主に羊の鞣していない皮でつくられるもので、2,200年ほど前にトルコで生まれたと言われています。その製法は長く、職人組合(ギルド)の秘法でした。

羊皮紙の中でも最高級とされるのは「vellum(ヴェラム)」と呼ばれるもので、子羊や子牛の皮からつくられます。これはとても薄くて丈夫な上、きめが細かく書き味がなめらかなので、非常に珍重されました。羊皮紙は中世以降、中国から入ってきた紙が普及してあまり使われなくなりましたが、1,000年以上保管できるといわれるほど保存力が高いため、今なお外交や儀礼の文書用に使われているそうです。

 

動物の皮は鞣して「革」にする以外に、古くから接着剤をつくることにも使われました。それが「膠(にかわ)」と呼ばれるものです。これは牛などの動物の皮に水を加えて煮込み、それをろ過して乾燥させたもので、ゼラチンが主成分。5,000年以上前から利用されていたようで、ツタンカーメン王の副葬品の家具にも使われていました。日本には7世紀初め頃に大陸から伝わったようです。

膠(にかわ)は木材を極めて強力に接着するため、家具や武具の製造に使用されました。また蒸気を当てるときれいに剥がれるため、バイオリンなど補修や調整の多い木製楽器の製作に今でも重宝されています。一方で、中国や日本では墨の、欧米では絵の具の練り材にも使われ、ウサギの皮が最高級品とされました。なお日本での膠(にかわ)の製造は、革の製造と同じく姫路市に集中しています。