【豚革】
Pig skin

豚革(ピッグスキン)は日本よりも欧米で評価の高い革素材で、高級ブランドバッグのメイン素材にしばしば採用されています。日本では豚肉の消費量が多いため、唯一自給・輸出が可能な革素材。その品質も世界的に高い評価を得ています。なお、豚肉の消費量では中国が圧倒的な1位ですが、皮も食材として利用しているため、原皮がほとんどない状態。そのため、中国は豚革をわざわざ日本から輸入しています。

豚革は牛革と構造が異なり、ほぼ銀面だけでできているため、かなり薄手になります。また線維が細く緻密なので、起毛させると非常に手触りの良いスエード革をつくることが可能。3本セットの剛毛が皮膚を貫いていて、表面に毛穴が3つずつ開いているのも大きな特徴です。摩擦に強く通気性が良いためバッグの内装素材にも多く使われ、土屋鞄でも「トーンオイルヌメ」シリーズなどで内装に使用しています。

【馬革】
Horse leather

馬革(ホースレザー、またはホースハイドhorse hide)は、線維が粗く薄いため牛革に比べて強度がやや劣りますが、しなやかで手触りがなめらかなことから、衣料品やインテリアなどに使われます。また傷が多いことに加えて、銀浮きを起こしやすいのが特徴。しかし経年変化で美しい艶が出るため、独特のワイルドな表情と味わいを生み出します。

同じ馬革でも、農耕馬品種の尻皮から採れるコードバン(cordovan)は“革のダイヤモンド”と称される高級素材。植物タンニンで鞣した革を表裏から削り込み、極めて緻密な層のみを残して、その床面を磨き上げたものです。革質はしなやかながら強靭(きょうじん)。かつ、大変きめが細かいため、磨き込むと美しく高貴な印象になります。土屋鞄では「コードバン」シリーズと、「ベルコード」シリーズに採用されています。

【水牛革】
Water buffalo leather

水牛(バッファロー)は、インドとその周辺国や東南アジア諸国、中国などで広く飼育されているウシ科の大型草食動物。特にインドでは、ヒンズー教で牛(コブウシ)が神の使いとされているため、牛革が基本的に存在しません。代わりに家畜として飼われている水牛が食用にされ、その皮が利用されます。なお、北米にいるバイソンというウシ科動物を「バッファロー」と呼ぶこともありますが、本来はこの水牛を指す名称です。

水牛の革は分厚く丈夫ですが、野生・放牧の個体が多いため、バラ傷が非常に多いのが特徴です。また、不均一でくっきりとしたシボ模様トラといった独特の表情があり、非常にワイルドな印象に。その一方で、仕上げ方によって濃厚な艶が出るため品格があり、高級衣料素材としても人気があります。土屋鞄では「アルマス」シリーズのメイン素材として長く採用されています。

【羊革】
Sheep skin

羊は多くの種類がありますが、直毛で肉や乳を目的とする熱帯原産のヘアシープと、欧州で羊毛のために品種改良されたウールシープとに大別されます。羊革(シープスキン)は、おおむね線維が細く絡まりも緩いので、どちらも軽くて柔軟な革になりますが、革素材として優秀なのはヘアシープ。線維がルーズでふっくらとした革質になるウールシープに対し、より引き締まった革質で十分な強度を備えています。

生後1年以内の子羊の革は「ラムスキン(lamb skin)」と呼ばれ、特別に高級革として扱われます。かなり薄くて軽い革になり、きめがたいへん細かくて柔らかく、しっとりした優しい肌触りが自慢。そのため、しばしば高級衣料に使われます。土屋鞄の「クーシェ」シリーズに採用されているラム革は、その中でも特に貴重とされるスペイン・エントレフィーノ種の原皮から仕立てられたものです。

【ヤギ革】
Goat skin

「ゴート・スキン」は成獣の革で、子ヤギの革は「キッド・スキン(kid skin)」といいます。インドやパキスタンが主産地ですが、古くからモロッコでも盛んにつくられ、古来より高級書籍の装丁や「バブーシュ」というサンダル、ランプシェードなどに使われてきました。一見、羊革と似ていますが、それよりやや固めでより緻密。耐摩耗性・弾力性に優れ、見た目の印象よりもずっと強靭な革質を誇ります。

ヤギ革は表面の独特なシボ模様が特徴で、光沢仕上げなどにより大変高級な印象に仕上がります。特に子ヤギの革であるキッドスキンはより柔軟性に富み、銀面も非常に美しいので、手袋や高級靴の素材として人気。ヨーロッパでは、羊皮紙の原料としてもしばしば用いられました。「クラルテ」シリーズの小物では、内装の一部に「グラスキッドスキン」が採用され、その美しい銀面の模様と発色が目を楽しませてくれます。


次回のテーマは
「鞣し用語」です。