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【バット】
Butt

面積の大きな牛の革は、身体の部位によって厚さやきめの細かさ、シワ具合などの性質が異なります。そのため特に欧州では、身体の部位ごとに分けて取り扱うのが一般的です。その中で、背中から尻にかけての部位を「バット(butt)」と呼んでいます。

バットは他の部位に比べ線維の密度が高く充実しており、きめが細かく丈夫で、ばらつきも比較的少ないため、高級品によく使われます。サイズが大きいため、通常背中で分割した状態で扱われますが、背中をまたいだ一枚革で採られることもあります。これを「ダブルバット」と呼び、土屋鞄では「ダレスバッグ」で採用しています。

【ショルダー】
Shoulder

牛革のうち、バットと並んでよく使われるのが「ショルダー(shoulder)」です。これは首から肩にかけての部位に当たり、時には顔部分の革が含まれることもあります。半分に割られることの多いバットと違い、左右つながった形で採られることがほとんどです。

ショルダーは頻繁に動く部位なので、太い線維と細い線維が密に混在し、強靭で丈夫な革ができます。そのため、強度を必要とする馬具やベルトなどにしばしば使われます。またシワやトラが多く、革らしい表情に富むのも特徴です。土屋鞄では、英国の馬具用革である「ブライドルレザー」などに使われています。

【ベリー】
Belly

牛革の中で、ショルダーとバットを除いた残りの部分、つまり腹部のことを「ベリー(belly)」と呼んでいます。牛革は多くの場合、腹部を縦にカットするので、ベリーは分割されている場合がほとんど。そのため面積が小さくなりがちで、用途が限られています。

腹部の皮膚は薄くてゆるいため伸びやすく、線維密度も低いためきめが粗くなります。そのためシワや銀浮きが多く、シボが大きくなるのが特徴です。逆に、その独特の表情を利用して、ワイルドな雰囲気の革に仕立てられることもあります。

【半裁】
Side leathe

成牛の革は非常に大きくて重く、そのままでは鞣しにくいため、多くの場合、分割して扱われます。欧州ではショルダー、バットのように分けますが、北米では「半裁(ハンサイ)」といって、背中で真二つに分割します。日本でも、明治時代にアメリカから革の技術を導入した経緯から、半裁で扱うことが多いようです。

一方でカーフやキップ、豚や羊、鹿などの革は比較的サイズが小さいため、半分に分割せず、一頭分をそのまま扱いますが、これを「全裁(全裁)」「丸革」といいます。なお成牛の原皮でも、ソファなどの家具に使うような非常に大きい革の場合は、全裁のまま鞣すことがあります。


次回のテーマは
「牛以外の動物の革」です。