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知れば知るほど、奥が深い革の世界。思わず誰かに話したくなるような、
革などにまつわるエピソードや
まめ知識を連載でお届けします。

知れば知るほど、奥が深い革の世界。
思わず誰かに話したくなるような、

革などにまつわるエピソードや
まめ知識を連載でお届けします。

1973年、イギリス南西部・プリマス沖の海底から1隻の船が引き揚げられました。名前は「キャサリナ・フォン・フレンズボーグ(Catherina von Flensburg)号」。この船は1786年に、サンクトペテルブルクからジェノバに向かう途中に沈没した貨物船で、積荷からは「ロシアンカーフ」と呼ばれるトナカイの革が見つかりました。

これはその名の通りロシアでつくられていた革で、後のロシア革命でその製法が失われ、“幻の革”となっていたものでした。驚いたことに、発見された革の中には腐敗していないものがあり、奇跡的に再生することができたそうです。しかし、船から引き揚げることのできた分の一部しか再生できなかったため、世界で最も希少な革として、恐ろしく高価な素材となっています。

昔の理髪店では、長い革の帯を壁に掛けていた所がよくありました。実はこれ、剃刀を研ぐためのものなんです。「革砥(かわと)」と呼ばれ、革の床面(肉側の面)に研磨剤を塗り、下端をつかんで帯を軽く引っ張りながら剃刀を研ぎます。剃刀は砥石でも研げますが、仕上げには必ず革砥が使われました。なぜなら、砥石では刃先が真っ平らにしか研げないからです。

顔という複雑な曲面を剃る剃刀は、刃先が微妙にカーブしています。しなやかな革砥はその具合を微妙に調整することが可能で、熟練の理容師はお客さまの顔に合わせて剃刀を研ぎ変えていたのだそう。ちなみに、革砥の素材は「コードバン」です。繊維の固さときめの細かさ、適度な張りが革砥に好相性なのだとか。なお、現在「コードバン」の革砥をつくる工房は、日本では一つだけです。

今ではクリスマスツリーの代名詞となっているもみの木は、昔のドイツや北欧では、革を鞣す物質「タンニン」の原料として使われていました。その樹皮には11%のタンニンが含まれ、つくった革は黄味がかった茶色になったそうです。

なお、もみの木はタンニンが充分に溜まるまで30年もの年月を要するため、今ではより早いミモザなどに取って代わりましたが、もみの木が「皮鞣しの木」だった名残は言葉に残っています。皮を鞣す物質名「タンニン」の語源は何と、古い高地ドイツ語で「もみ」を指す“tanna(タンナ)”。それだけ、もみの木は「皮鞣し」の印象が強かったのでしょう。

年末の大掃除で、マイカーの洗車をされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。その際、ボディに付いた洗剤や水分を拭き取り、その後を磨くのに最適な素材として、昔から「セーム革」という天然皮革が使われてきました。これは元々、アルプスのカモシカの皮を魚油で鞣したもので、今では鹿や羊の皮で仕立てたものもセーム革と呼びます。中でも最上質とされるのは、「キョン」という中国の鹿のものです。

その一番の特徴は、髪の毛の15万分の1という超極細の繊維構造。人工繊維などとは比べものにならないほどの緻密さで優れた吸水性を発揮し、油や汚れを面白いように吸着します。また繊維が柔らかいため傷を付けることもなく、油脂も含むのでつや出し効果も抜群。さらに特異なのが、革なのに何度も水洗いができ、ずっと柔らかさを失わないという性質です。まさに洗車にうってつけの、驚きの革素材ですよね。

1973年、イギリス南西部・プリマス沖の海底から1隻の船が引き揚げられました。名前は「キャサリナ・フォン・フレンズボーグ(Catherina von Flensburg)号」。この船は1786年に、サンクトペテルブルクからジェノバに向かう途中に沈没した貨物船で、積荷からは「ロシアンカーフ」と呼ばれるトナカイの革が見つかりました。

これはその名の通りロシアでつくられていた革で、後のロシア革命でその製法が失われ、“幻の革”となっていたものでした。驚いたことに、発見された革の中には腐敗していないものがあり、奇跡的に再生することができたそうです。しかし、船から引き揚げることのできた分の一部しか再生できなかったため、世界で最も希少な革として、恐ろしく高価な素材となっています。

昔の理髪店では、長い革の帯を壁に掛けていた所がよくありました。実はこれ、剃刀を研ぐためのものなんです。「革砥(かわと)」と呼ばれ、革の床面(肉側の面)に研磨剤を塗り、下端をつかんで帯を軽く引っ張りながら剃刀を研ぎます。剃刀は砥石でも研げますが、仕上げには必ず革砥が使われました。なぜなら、砥石では刃先が真っ平らにしか研げないからです。

顔という複雑な曲面を剃る剃刀は、刃先が微妙にカーブしています。しなやかな革砥はその具合を微妙に調整することが可能で、熟練の理容師はお客さまの顔に合わせて剃刀を研ぎ変えていたのだそう。ちなみに、革砥の素材は「コードバン」です。繊維の固さときめの細かさ、適度な張りが革砥に好相性なのだとか。なお、現在「コードバン」の革砥をつくる工房は、日本では一つだけです。

今ではクリスマスツリーの代名詞となっているもみの木は、昔のドイツや北欧では、革を鞣す物質「タンニン」の原料として使われていました。その樹皮には11%のタンニンが含まれ、つくった革は黄味がかった茶色になったそうです。

なお、もみの木はタンニンが充分に溜まるまで30年もの年月を要するため、今ではより早いミモザなどに取って代わりましたが、もみの木が「皮鞣しの木」だった名残は言葉に残っています。皮を鞣す物質名「タンニン」の語源は何と、古い高地ドイツ語で「もみ」を指す“tanna(タンナ)”。それだけ、もみの木は「皮鞣し」の印象が強かったのでしょう。

 

年末の大掃除で、マイカーの洗車をされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。その際、ボディに付いた洗剤や水分を拭き取り、その後を磨くのに最適な素材として、昔から「セーム革」という天然皮革が使われてきました。これは元々、アルプスのカモシカの皮を魚油で鞣したもので、今では鹿や羊の皮で仕立てたものもセーム革と呼びます。中でも最上質とされるのは、「キョン」という中国の鹿のものです。

その一番の特徴は、髪の毛の15万分の1という超極細の繊維構造。人工繊維などとは比べものにならないほどの緻密さで優れた吸水性を発揮し、油や汚れを面白いように吸着します。また繊維が柔らかいため傷を付けることもなく、油脂も含むのでつや出し効果も抜群。さらに特異なのが、革なのに何度も水洗いができ、ずっと柔らかさを失わないという性質です。まさに洗車にうってつけの、驚きの革素材ですよね。

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