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革のなるほど vol.7

知れば知るほど、奥が深い革の世界。思わず誰かに話したくなるような、
革などにまつわるエピソードや
まめ知識を連載でお届けします。

知れば知るほど、奥が深い革の世界。
思わず誰かに話したくなるような、

革などにまつわるエピソードや
まめ知識を連載でお届けします。

2月3日(2021年は2月2日)は「節分」。節分とは「季節の変わり目」の意味を持ち、各季節(立春、立夏、立秋、立冬)のそれぞれが始まる前日を指します。季節の変わり目には邪気(鬼)が発生すると考えられているため、「魔滅」にかけた豆まきをする習わしがありますが、豆まきに登場する鬼はなぜかトラのパンツをはいています。「どうしてトラのパンツをはいているんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。その理由は、古代中国から伝わってきた方位思想にあります。

中国の「陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)」では、悪い方角「鬼門」を北東としていました。これを「子(ね)」を北に配した十二支の方位に当てはめると、「丑(うし)」と「寅(とら)」の間になります。そのため、「鬼」は牛の角にトラ皮のパンツとなったのです。なお、桃太郎の鬼退治に犬と猿とキジがお供をするのは、丑寅の反対側にある3つの方位が、「申酉戌(さる・とり・いぬ)」だからだそう。

ロシアの民族数は、実に180以上。そのうち、アムール川流域(中国領も含む)で生活している少数民族に「ナナイ(Nanai)」がいます。彼らは中国の人々から「魚皮韃子(魚の皮をしたタタール人)」と呼ばれていましたが、これは彼らが魚の皮の服を着ていたため。その魚皮服は刺しゅうが特徴で、特にハレの日の特別な衣装として着用されていたようです。

服づくりに使われた魚は、サケやマス、ナマズやチョウザメなど。その皮を平らな板に張って完全に乾燥させ、木づちで入念にたたいて柔らかくしてから使います。この魚皮づくりは全て女性の仕事で、鹿などの動物から採った腱を糸にしてつなぎ合わせ、服に仕立てていました。ちなみに、ほとんどの魚皮の服は冬用だったようですが、なぜかチョウザメの皮の服だけが夏用だったそうです。

現代では、男性の力仕事の印象が強い皮鞣しの仕事。ところが、縄文時代では「お母さん」の仕事でした。その証拠は、遺跡から出土した歯の形。出産経験のある女性の歯の多くが、平らにすり減っていたのです。これは歯でかんで皮の繊維をほぐしながら、唾液で鞣していたと考えられるため。つまり、最古のタンナー(皮鞣し職人)は「お母さん」だった可能性が高いのです。

ちなみにこの素朴な皮鞣しの方法は、アラスカ先住民など北方諸民族の間に今でも残っています。それはタンニンの原料となる植物が手に入りにくいためで、アザラシなどの皮を口に含んで何度も噛み、柔らかくしながら唾液で鞣すのだそう。そして、この仕事を担当するのは男たちが狩りに出る間、家を守る女性たち。ここでもやはり、皮を鞣すのは「お母さん」たちなのです。

2月3日(2021年は2月2日)は「節分」。節分とは「季節の変わり目」の意味を持ち、各季節(立春、立夏、立秋、立冬)のそれぞれが始まる前日を指します。季節の変わり目には邪気(鬼)が発生すると考えられているため、「魔滅」にかけた豆まきをする習わしがありますが、豆まきに登場する鬼はなぜかトラのパンツをはいています。「どうしてトラのパンツをはいているんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。その理由は、古代中国から伝わってきた方位思想にあります。

中国の「陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)」では、悪い方角「鬼門」を北東としていました。これを「子(ね)」を北に配した十二支の方位に当てはめると、「丑(うし)」と「寅(とら)」の間になります。そのため、「鬼」は牛の角にトラ皮のパンツとなったのです。なお、桃太郎の鬼退治に犬と猿とキジがお供をするのは、丑寅の反対側にある3つの方位が、「申酉戌(さる・とり・いぬ)」だからだそう。

ロシアの民族数は、実に180以上。そのうち、アムール川流域(中国領も含む)で生活している少数民族に「ナナイ(Nanai)」がいます。彼らは中国の人々から「魚皮韃子(魚の皮をしたタタール人)」と呼ばれていましたが、これは彼らが魚の皮の服を着ていたため。その魚皮服は刺しゅうが特徴で、特にハレの日の特別な衣装として着用されていたようです。

服づくりに使われた魚は、サケやマス、ナマズやチョウザメなど。その皮を平らな板に張って完全に乾燥させ、木づちで入念にたたいて柔らかくしてから使います。この魚皮づくりは全て女性の仕事で、鹿などの動物から採った腱を糸にしてつなぎ合わせ、服に仕立てていました。ちなみに、ほとんどの魚皮の服は冬用だったようですが、なぜかチョウザメの皮の服だけが夏用だったそうです。

現代では、男性の力仕事の印象が強い皮鞣しの仕事。ところが、縄文時代では「お母さん」の仕事でした。その証拠は、遺跡から出土した歯の形。出産経験のある女性の歯の多くが、平らにすり減っていたのです。これは歯でかんで皮の繊維をほぐしながら、唾液で鞣していたと考えられるため。つまり、最古のタンナー(皮鞣し職人)は「お母さん」だった可能性が高いのです。

ちなみにこの素朴な皮鞣しの方法は、アラスカ先住民など北方諸民族の間に今でも残っています。それはタンニンの原料となる植物が手に入りにくいためで、アザラシなどの皮を口に含んで何度も噛み、柔らかくしながら唾液で鞣すのだそう。そして、この仕事を担当するのは男たちが狩りに出る間、家を守る女性たち。ここでもやはり、皮を鞣すのは「お母さん」たちなのです。