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スタイリストが語る土屋鞄バッグパックの魅力

BACKPACK TALK SESSION

土屋鞄のバックパックには、長年のランドセルづくりで培った技術が生かされています。今ではファッション感度の高さでも一目置かれる存在に。トレンドに精通するスタイリスト二人が、革のバックパックの魅力やコーディネートについて語る座談会を開催しました。

PROFILE

豊島 猛

スタイリスト

1983年生まれ、埼玉県出身。集英社『UOMO』など雑誌やウェブ媒体を中心に、幅広くファッション分野で活躍。捻りのあるセレクトを生かしたシンプルなスタイリングが持ち味。

井田 正明

スタイリスト

1986年生まれ、埼玉県出身。トレンドに精通し、集英社『MEN'S NON-NO』などファッション媒体、広告、タレントのスタイリングに加えて、近年はショーの演出にも携わる。

嶋谷 潤

土屋鞄製造所
R&Dセクションマネージャー

1987年生まれ、兵庫県出身。革製品マニアで、建築関係の会社から土屋鞄に転職。店舗スタッフなどを経て商品企画室に。現在は試作や品質管理など、デザイナーと工房をつなぐ仕事を担当。

大人ランドセルから
背負い心地の良いバックパックへ

嶋谷
子ども用ランドセルのイメージが強い土屋鞄ですが、20年ほど前からいろいろなバッグをつくるようになりました。中でもバックパックは、ランドセルの技術を生かした背負いやすい構造になっているのが特徴です。
井田
他ではどんな部分にランドセルの技術が生かされているんですか?
嶋谷
ランドセルは厚い革を縫い合わせるので0番や1番など太い糸を使うんですね。土屋鞄のバックパックも太番手の糸を使っています。
豊島
土屋鞄は大人用ランドセルもつくっていますよね。
嶋谷
はい、10年前に大人の仕事鞄をテーマに、子どもの仕事鞄であるランドセルをアップデートして誕生したのがこの「OTONA RANDSEL」です。当時はまだスーツがビジネススタイルの主流でしたので、スーツに合わせるバッグの新しいスタイルとして提案しました。
豊島
かぶせがあって形もボクシーで、確かにランドセル風ではありますね…。
嶋谷
「OTONA RANDSEL」はサッチェルバッグ風の差込錠にするなど、デザイン的にはランドセル感を薄くしつつ、背負い心地に影響する背面は、しっかりクッション材を入れて大人の背中の形状にあう構造にしています。
井田
このバックパックは背面がランドセルっぽく立体的になっていますが、これも「OTONA RANDSEL」のバリエーション?
嶋谷
これは「TSUCHIYA バックパック」という製品です。ランドセルの良さが背負い心地だとしたらそこは残して、ランドセルの型にこだわらずボディに関しては自由に形をつくってみようと。
嶋谷
「OTONA RANDSEL」と「TSUCHIYA バックパック」は、イタリアンレザーを使っています。それぞれ表情は違いますが時間が経つと風合いが増します。土屋鞄では経年変化が楽しめるレザーが人気です。
井田
レザーのバックパックもこんなに種類があるんですね。ここまであるとは知りませんでした。
嶋谷
土屋鞄の大人向けのバッグは、もともとはビジネスバッグとかフォーマルな印象が強かったんです。もう少しデイリーに寄り添ったカジュアルなものも打ち出していこうと製品の幅を広げ、「OTONA RANDSEL」をきっかけに今はバックパックに注力しています。

レザーバックパックが
着こなしに与えてくれるもの

井田
嶋谷さんのお話を聞いていて改めて思いましたが、土屋鞄のプロダクトに対しての愛を感じます。ランドセルや仕事用の鞄はもちろん、今日見ているバックパックのようなファッション性の高いものまで、レザーの可能性を楽しんでいる印象があります。
豊島
バッグの機能がしっかり生活に寄り沿っていますよね。遊び心のあるバックパックでも機能がしっかりあって、しかもレザーで丁寧につくり込む。根本的なブランドのスタイルを崩さないところが土屋鞄らしい。
嶋谷
バックパックはもちろん他の製品も、新しい楽しみ方が生まれるようなものづくりのヒントをいつも探しています。
井田
僕は今回見たバックパックの中ではこの「トーンオイルヌメ フラップバックパック」の「ブラック」が良いと思いました。ファッションのトレンドも少し前まではビッグシルエットでストリート系でしたが、最近はスラックスにシャツをタックインしてベルトをしめて革靴を履くような、シックでそぎ落とされたスタイルに変わってきています。
嶋谷
僕たちはトレンドをそこまで意識しているわけではないんですが、そういう空気感は感じています。
井田
今まで以上に上品なムードや洗練されたものが気になるんですよね。大人としてエレガントなものを持ちたいという気持ちもあったので、この「フラップバックパック」は、今の気分にぴったりでした。ドレッシーな服装にもマッチするけれどかっちりしすぎていなくて、カジュアルにも使えそうだなと。
嶋谷
「フラップバックパック」は2024年春に都会的に、スマートさやエレガントさを取り入れてアップデートしたところなので、井田さんのコメントはとてもうれしい。
井田
今日僕が着ている黒いスキッパーにホワイトパンツのような、モダンなカジュアルスタイルにも合いますしね。ストラップがレザーだからテーラードジャケットにスラックス、みたいな格好にもマッチします。
豊島
僕はカジュアルにバッグを使うんで、この「デイバック Large」。形的にはカジュアルなスウェットにも合うし、レザー素材だからコートに背負っても良いですよね。もともとデイパック型が好き、というのもあります。
井田
すごく豊島さんらしいチョイスです。
豊島
ストラップがレザーじゃないのも良かった。ここがレザーだと少し重たいというか、コーディネートも難しくなってくる気がしました。
嶋谷
ストラップはつくる過程で、すごく議論した部分なんです。今までのセオリーだとレザーになるんですが、少し軽く仕上げたいという思いもあったのでナイロン素材にしました。
豊島
この素材のコンビネーションのおかげでカジュアルなルックスになっているのがすごく良い。僕は気張らないファッション、例えばTシャツとスウェットにジャケットを羽織ってこのレザーのデイパックを持ちたいんですよね。スウェット上下にステンカラーコート、キャップをかぶってこれを合わせるのも良い。
井田
豊島さんってカジュアルで力が抜けているけれど、いつも上品なんですよね。スタイリングも私服も。
豊島
カジュアルでも例えばスウェットの素材がカシミヤだったり、良いものを着ているけれど普通に見えるというのが好きなので、ナイロン素材が一般的なデイパックがレザー製というのは、僕のスタイルにぴったりなんです。
井田
今日の豊島さんみたいなカバーオールにブラックデニムのコーディネートに、レザーのバックパックを持つことで、大人の重厚感が出せます。
豊島
そう。レザーのバックパックは本来カジュアルなアイテムを大人っぽく、落ち着いた印象にしてくれますよね。このバックパックに関してはミリタリーテイストを感じるグリーンの色味も良いなと思いました。
井田
レザーにはコーディネートを大人っぽく、落ち着いた印象に見せるポテンシャルがあると思います。だから僕はどんなにカジュアルな格好のときでも、1アイテムは必ずレザーを入れるようにしています。
嶋谷
フレームがある絵とない絵の違い、みたいなことですね? 確かに革製品には引き締め効果があると思います。僕は革靴が大好きで、いろいろ履くんですが、やっぱり着こなしを締める役割として選ぶことが多い。バッグも同じですよね。

デザインや素材…
レザーバックパックのネクスト

井田
この口がロールトップになった袋のような変わった形のバックパックも気になっていて…これもレザーなんですよね?
嶋谷
これは日本の米袋に着想した「ジャパンモチーフ Rice バックパック」です。薄く漉いた牛革の裏にデュポン社のタイペックを貼り合わせて、紙のような軽さと質感を出した素材を使っています。
豊島
これ、軽くて良いですね。簡易的に見えるのに、中にダイレクトアクセスできるファスナーや背面には小物用のポケットもあって。このポケットやファスナーがあるとないとでは、使い勝手が全然違いますよね。
嶋谷
土屋鞄はガラケーの時代から携帯用の背面ポケットを、必ずバックパックに装備しています。
井田
この長めのストラップがついた肩掛けもできるバックパックも、ちょっと良いなと思いました。革の感じもムラがあってラフに使えそうだし。
嶋谷
その「ビークル ショルダーバックパック」は3way仕様です。ロウ引きの革で、このヴィンテージっぽさがまた良いんですよ。
豊島
ちなみにスエードのバックパックはないんですか?意外とレザーの艶感が苦手という人もいるので、毛足の短いスエードとかヌバックのバックパックがあったら良いと思いました。
嶋谷
スエードのトートバッグはありますが、バックパックはないですね。おっしゃるように、確かに服好きの方には響きそうですね。
井田
確かに。大人の上品なカジュアルという視点からもスエードやヌバックはありですね。土屋鞄がつくるスエードのバックパック、期待しています。

Photo | Erina Takahashi
Text | Hisami Kotakemori

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