2025.8.11
【徒然革】
革を語るメルマガ:
実際に土屋鞄の革を
「日焼け」させてみたら……?
日常生活の役に立たない、
マニアックな革のうんちく知識を
気ままにつぶやくメルマガ
「徒然革(つれづれがわ)」
つれづれなるままに日暮らし、
PCに向かひて、
心にうつりゆく革のよしなしごとを
そこはかとなく書きつくれば、
あやしうこそ革狂ほしけれ——
かつて「副店長」の肩書で、数々のマニアックな革のうんちくコラムを担当した古参スタッフが、日常生活の役に立たない、知るだけムダな革や鞄の小ネタを気まぐれにお届けします。
今回の革メルマガでは前号予告の通り、「大人の自由研究」として「日焼け」の実験を敢行。実際に革を「日焼け」させるとどうなるか、簡単な実験でざっくり検証してみたいと思います。
良く冷えたプレミアムビール(天然水使用)で英気を養いながら、ゆるりとご笑覧ください。
革の「日焼け」、始めました
前号の革メルでは、革が太陽光などで「日焼け」する仕組みや条件などについて解説しましたが、今回は、実際にタンニン鞣し革で日焼けをさせるとどうなるか、簡単に実験をしてみることにしました。
まず革選びですが、土屋鞄には日焼けでエイジングが進みそうな染料仕上げのタンニン鞣し革がいくつもあります。その中で今回は、たまたま手に入……いや、熟考を重ねた結果、最も素朴な「ナチューラ」シリーズの「ヌメ革」と、ご愛用者の多い「ディアリオ」シリーズの「オイルメロウレザー」の端革を使うことにしました。
左が「オイルメロウレザー」、右が「ヌメ革(ブラウン)」
この2つの革を適当なサイズに切り取った上で、日焼けの度合いが分かりやすいよう、上に文字を切り抜いた黒い紙を載せて日光浴をさせることに。こうすれば、実験終了後に日光が当たっていた部分とのコントラストが生じ、文字の読みやすさで日焼けしやすさの差が把握できるという寸法です。
革としての違いをざっくり言うと、素上げの状態に近い「ヌメ革」に対し、オイルをたっぷり含んでいるのが「オイルメロウレザー」。そこに色の違いも加わって、日焼け具合がどう違うのかというのが注目ポイントですね。
まるでバカンスのように、優雅な日光浴風景
なお、実験は晴天日を選んで5日間、それぞれ10:00~17:00の間で5時間以上の日光浴を実施しました。オフィスの日当たりがそれほど良くなかったため(苦笑)、効果のほどが懸念されましたが、さて、日焼けの結果は……?
【実験1】そのまま「日焼け」させてみる
左「オイルメロウレザー」、右「ヌメ革」
まずは、同じ直射日光の条件下で仲良く日焼けさせた2つの革の違いを検証してみましょう。どちらも日光が当たっていたところの方が色が明るくなり、退色した感じになっていますね。ただ、左の「オイルメロウレザー」の方が元々オイルを多く含んでいるせいか、退色の度合いが少し軽い印象。逆に「ヌメ革」はかなりはっきりと差が出ています。
次に表面の手触りですが、「ヌメ革」の日焼けした部分がややかさついた感じになっていた一方で、「オイルメロウレザー」の方は「ちょっと、さらっとしてきたかな?」くらいの印象。顕著な変化は感じられませんでした。結論として、「ヌメ革」の方がより日焼けをしやすいと言えそうです。
「日焼け」だけだと退色のリスクも
以上の実験によって、染料仕上げのタンニン鞣し革をそのまま日焼けさせると、退色して表面が乾いてくることが分かってきました。でも、これでは味が増していくエイジングにならないのでは……そう、ここで大事なのがオイルケア。前号での説明通り、直射日光で長時間日焼けをさせると革の水分や油脂分が飛んでしまうため、表面がかさついてしまうことがあります。そのため、長時間日光を浴びたらオイルケアが必要なんです。
では、オイルケアをしながら「日焼け」をさせると、本当に良いエイジングができるのでしょうか。そこで今回はさらにもう1回、オイルケアを伴う「日焼け」の実験を敢行することにしました。
【実験2】「日焼け」with オイルケア
左:「オイルメロウレザー」右:「ヌメ革」
まず革や日照の条件は前回とほぼ同じにした上で、今回はそれぞれ、事前・事後に「コロニル シュプリームクリームデラックス」を塗布。前回と同じ黒の抜き型を載せ、熱帯化する都内オフィスのベランダで晴天の5日間、日光浴を実施しました。果たして、その結果たるや如何……?
果たして、オイルケアの効果は……
左が前回(オイルなし)、右がオイル塗布
左が前回(オイルなし)、右がオイル塗布
2回目の実験時の方が日差しも温度も高かったせいもありますが、オイル塗布の場合の方がよりくっきりとカバー文字が見えていますね。つまり、オイル塗布の場合の方が日焼け部分(文字の周り)の変化が大きかったということかと思われます。また、写真ではちょっとわかりにくいのですが、どちらもオイル塗布の方が、日焼け部分(文字の周り)に赤味が出ていているように見えますね。
今回の簡易実験レベルでははっきりとしたエイジング効果を確認するに至りませんでしたが、概ね、オイル塗布をしてあると日焼けしても味わいになるということが、推測できる結果になったように思われます。今後、別のオイル(例えば動物性のミンクオイルなど)での実験も試してみたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。今回の「自由研究」、いかがでしたか? 革に個体差がある上、「日焼け」は天候にも左右されるので実験結果が読みにくいのですが、各5日間という突貫スケジュールのわりには目に見えやすい結果は出たかと思います。
なお「日焼け」に関しては、カラーレスのヌメ革である「プレーンヌメレザー」を飴色にしつつある猛者がスタッフにいるため、いずれその革でも実験をやってみたいですね。ご要望が多ければ、計画してみたいと思います!
といったところで、今号はここまで。次号の「徒然革」では、簡単な革の日焼け実験をしてみますので、どうぞお楽しみに。それでは、またお会いしましょう。とっぺんぱらりの、ぷう。






